【ザ・対談】vs 樹紫苑さん

【ザ・対談】vs 樹紫苑さん

2017年6月。

神木優ソロアクト「MOMOTARO」が遂にアメリカへ!
6月10日に初の海外公演・アメリカシアトル公演。
出発1週間前、英語チェックを兼ねて翻訳していただいた英語の演目を実際に見ていただいた後、お話を伺った。

神木 単刀直入にどうでしたか?

  面白かったです。何回も聞いているのに素で笑っちゃいました。たった一人の観客なのに。
アメリカの地で、神木さんが実際に着物を着てやっているのがちゃんとビジュアライズできるっていうかね、そのシチュエーションで神木さんが今日しゃべっているのがダイレクトに入ってきて、つい笑ってしまいました。すごい成功の予感というか、匂いがします。

神木 そんな難しい英語がないじゃないですか、落語って言っても題材は桃太郎だし、そんなに難しい英語も表現もないから、伝わり方も子供でも大丈夫かなっていうのがありますよね。
一番最初、僕が日本語を文字に起こして、そこから直訳っぽい英語を作ったじゃないですか。で、それを紫苑さんに投げて、なんだろう、言い回し?英語っぽい言い回しに変えてもらったじゃないですか? どうでした?

  難しかったところですか?

神木 はい、結構変わってるじゃないですか、僕が作った英語から。

  やっぱり日本人が英語に訳す時の一番難しいポイントって、日本語の言葉の音に引きずられちゃうというのがあって、そうすると、その音一つの言葉を、それだけを単体を調べて文章の中に入れ込むんですよね。
神木さんは文法なんかしっかりできているから、英語そのものは問題ないんだけど、果たして神木優がここで本当に言いたかったことはこれじゃない?みたいな、言葉の選び方が、

神木 ニュアンスがね、

  そうそう、ちょっと微妙に違ってて、間違いじゃないし大きく外れてはないけど、もっと的確な英語の単語があるだろうと、一生懸命自分なりにイマジネーションを膨らませて選ぶところが結構大変だった。
とは言っても、実質的には本当に面白かったんですけどね、そこを紐解いていくのが。どうしたら神木優が言いたかったこと、表現したいことが伝わるかなぁって。

神木 紫苑さんは翻訳家として、仕事もしているわけじゃないですか?今回のは書籍の翻訳とは違うんですよね?

  全然違いますね。理路整然と読む書籍の言葉とは違ってて、スピード感っていうのも、言葉の中に入れ込まないとダメだし、間も想定しなきゃいけないし。
実際、訳してて思い浮かべていたのはアメリカのタイムラインっていうか、そういう一人芝居、

神木 スタンドアップコメディみたいなね

  そうそうそうそう、そういうものがあったので、あの間とかスピード感ではめた場合でどうなるのか、と想定しながらやってました。

神木 リズムいいですもんね。まだ完全に体現できてないところはありますけど、すごいリズムよく進んでいくんですよね。

  今日ね、神木さんやっているのを見て、そのリズムも訳した単語や表現も合っていた、というのが確認できてよかったです。

神木 いやーこれねー、結構な量ですよ。本当に(笑)あ、本当にありがとうございます。

  多いですよねー(笑)。でも、多いっていう意識はやっている時は全然なくて、

神木 僕はありますけどね(笑)

  メモライズするっていうね、記憶する部分がね、確かに多いですよね(笑)

神木 なんでこんなに言葉が違うんだろうって思いますよね、英語と日本語って。全く一緒になる要素がないじゃないですか。アルファベットが一緒なわけでもないし、

  単純に文法的に語順が違うっていうのは置いておいたとしても、普段しゃべってる言葉も含めて、リズムが全然違うんですよね。英語ってほんとリズムがあって、パンチがあって、

神木 なんだっけ、ヘルツが全然違うんですよね。日本語って一番小さいんでしたっけ?

  そうそう、振れ幅が小さい。
だから外国人が聞いたら、なんだかリアクションがない、面白かったのかなんだのかわからんないし、悲しいのかなとかわかんない、つかみどころのない言語でしょうね。 日本語は本当にそうかも、韓国語だってあるし、中国語だってあるしね。日本語って逆にいうと不思議かも。

神木 いやーこの英語落語をね、ネイティブの人の前でやるのが非常に不安はありますけど、どういう反応があるのか。
英語そのものは問題ないと思うんですよ。僕の英語じゃなくてね、文章そのもの、紫苑さんに訳してもらった英語は問題ないと思うんですよ。
話としては受けると思うんで、あとは僕の表現力とかリズムとかね。僕の問題じゃないですか。
まぁそこが、紫苑さんの想定しているものが100%が出せれば非常に面白いものになると思うんですけどね。まぁがんばって、稽古しますけど。怖いなぁー。

  今日は初通しだったんですもんね。

神木 人を前にしてはそうですね、初通しでしたね。テンパりましたねー(笑)
あとは稽古でどんどん詰めていくんでね。とにかく頑張ります。

  お父さんと子供の掛け合いのところなんかは想定していた以上に間も取れていて、面白かったし、一人で笑ってしまいました。

神木 いや、掛け合いのところの方が言葉を出すという意味では楽なんですよね。掛け合いだから会話でしょ。
でも一人でベラベラーって喋るところは、ちょっと詰まると、あれ?なんだっけ?ってなっちゃうから、掛け合いの方が楽なんですよ。

  偉そうに子供が言っている部分とかね、あの辺はね、敢えてすごい堅い言葉を選んでいて、クソ生意気なガキを演出しなくちゃなって。

神木 確かに!子供のところの表現ってね、直訳すると、お父様、わたくし、おひとつ、ご質問があるのですが、お伺いしてもよろしいでしょうか?みたいなね。

  そうそうそうそう、お父様、不明点があるのですが、お伺いしてもよろしいでしょうか?みたいなね。
“I would very much appreciate it”ってね、めっちゃめちゃ丁寧な言葉なんですよ。
この丁寧なのを敢えて選んだんですけど、例えば金融の世界でビジネスレターで使うような表現だったりするんですよ。これって。
でも、この寝際のお父さんと息子の会話の中でこれを仰々しく言う、このクソ生意気なガキンチョ、どこでそんなの覚えてきたんだろうって。financial problemとかも言ってるしね。 こういう表現の方がギャップがあって、面白いだろうなぁって。こういうのが体感できて楽しかったですよ。

神木 これ、ネイティブの方が聞いて、面白い英語をチョイスしてるなって思ってくれれば嬉しいですよね。

  そうですね。そしたら私も一つハードルを超えたなーって思えますよね。

神木 落語を訳しました!ってね。

  そうそうそう。結構、書籍とかで出させてもらってるのは、逆のパターンなんですよ。日本人ですから英語から日本語に訳すのがメインなんですけど、今回はその逆ですから、チャレンジとしては。
で、私も実際ネイティブじゃないし、日本人としてやってどれくらい伝えられるのかなって。

神木 でも、紫苑さんが書いてくださったものを、ネイティブの方にチェック入れてもらいましたけども、あんまり直しなかったですもんね。

  そうですよね、結構そのまま残ってて、大丈夫だったのかなーと思いつつ、細かいこと言うと”s”がついてるとかついていないとか、”he”だったら”don’t”じゃなくて”doesn’t”になるとか、こんな言い方は古臭いとかね、日本人じゃ完璧にはチェックできないんですよ。

神木 まぁね、でも、僕思うんですけどね、外国人の人に片言でね、道聞かれたりするじゃないですか?「コレ、イク、エキ、イケマスカ?」とか聞かれるじゃないですか。ちょっと違うじゃないですか、日本語としては。でもわかるじゃないですか、意味。

  うん、それはある意味、そういうもんだってね。

神木 そう思うと、日本人が発する英語もそう言うもんじゃないですかね。だから例えば、”he don’t”って言ってもまぁ伝わるわけじゃないですか、多分。

  伝わりますね。たまにネイティブでも言う人いますしね。

神木 ですよね。だからあんまり細かい点は、気にしないようにしようと思って。”s”がついてるとかついてないとか、”a”なのか”the”なのかとかね。そんなに大した問題じゃないのかなって。

  そうですね、全体の流れの中での一部だから、それよりも流れが淀んじゃうとね。今回の演目ではね、流れが大事だから。

神木 お父ちゃんが焦ってぶわーってまくし立てるところなんてね、意味わからなくても面白いと思うんですよ。焦って何言ってるかわからないみたいなね。

  その必死感がね。伝わると面白いですよね。

神木 いやー、これ、本当に面白くなりそうですよ。いろんな意味で楽しみですよ。不安も多いですけど。

  ほんと楽しみですね。早く現地でやっているのを観てみたいです。

神木 テンパらないように頑張って稽古します。今日は本当にありがとうございました。
引き続き、宜しくお願いします!

  宜しくお願いします。ありがとうございました。

↓シアトル公演のメイキング映像。

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